縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

クスリをください

― あのぅ すみません
   コトバに効く薬ありませんか ―
     コトバに効く薬ですか
     はぁ そういったものは
     当店では取り扱っておりませんねぇ
     外用薬ですか内服薬ですか
商店街の薬局で聞いてみましたが
どうやらそこには売られていないようでした


― あのぅすみません
   コトバに効く薬ありませんか ―
     さあ ちょっと聞いたこともないですねぇ
    どういった症状なんですか
― 僕の意に反して
   コトバが勝手なことばかりするんです ―
   勝手なこと……といいますと
― まったく云うことを聞いてくれなくて……
   こうして話をしている間も何かするんじゃないかと思うと
   もうどうにかなってしまいそうで
   夜もろくろく眠れないんです
   僕は気が狂ってしまったのかもしれません ―
      それはさぞお苦しいことでしょう
      貴方の探している薬はうちにはございませんが
     貴方は いまとても疲れているのだと思われます
     とても強いストレスを感じていらっしゃるのかもしれませんね
      楽になる薬を差し上げましょう
     いえ 何も怪しい薬ではないのでご安心を
     抗精神薬とそれから睡眠導入剤を
     そうですね 1週間分出しておきます
      すぐに効く薬ではありませんが
      徐々によくなってくると思いますよ
      1週間後に予約を取っておきますから
     またそのとき様子を聞かせてください
― 僕 なにか大変なビョーキなのでしょうか ―
      はっきりとしたことは様子をみないとなんとも云えませんが
      そう深刻になる必要はありません
      大丈夫 心配ありませんよ
      お大事になさってください
街で評判のお医者さんに尋ねてみましたが
心の病を疑われただけで 
コトバに効く薬など一笑にふされただけでした


          コトバ コトバ コトバ コトバ
          生きていくために必要だから
          ヒトはそれを手に入れたのでしょ
          ひとりで生きていくには
          ヒトはあまりに無防備で
          あまりにたよりない生き物だったから
          誰かと関り智恵を分け合い 種を残すため
          それを手に入れたのでしょ


          なのに なのにさ
          コミュニケーションのツールだったはずのそれが
          いまじゃ 勝手にひとり歩き

          気にしないで 気にしないで 僕は大丈夫だから
          本当は淋しくて心細くて死んでしまいそうで
          お願いだから今日だけでもそばにいて
          そう云いたいくせに

          何かあったら何でも云ってね な~んて
          ホントに云ってこられたって 一体何が出来るとでも?

          知らないことを知らないということが
          解らないことを解らないという勇気がなくて
          知ったかぶりを装っては大恥さらし
          云いたくないのか云わせたくないのか
          そんなちゃちな自尊心をいつまでたってもねこかわいがりで

          昨日まであんなに笑い合ってしゃべっていたのに
          些細なことがきっかけですべてが裏返しになって
          歯止めが利かなくなってもうなにもかも全部ダメにしてしまったり
          ごめんねって云えば それで済んでしまえるものを
          ありがとうって云えば それだけで繋がれるものを
          喉の奥にひっからまって 声に出すことさえできなくて
          部屋の隅っこで灯りもつけず ひとりぼっちで泣きながら
          それでも平気へっちゃらだと 卑屈に笑ってしまう僕なのです
 
          コトバって心から作られてるものだと思っていたけれど
          どうやらそれは違うのかもしれません
          僕はもう 僕の中から勝手に出て行くコトバたちを
          どうすることもできないのです


      そんな困ったコトバたちに効く薬があったなら
      僕は 真っ先に手にいれるんだけど
      きっとどこか遠い国の偉い学者さんが
      日夜寝るヒマも惜しんで
      そんな薬を研究開発しているに違いないけど
      いまのところまだ
      そんな都合のいい代物はどこにもないらしいので
      今日も うだうだ云いながら
      そんな困ったちゃんたちを 
      詩にあてがって もてあそぶ





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ぼくたちの失敗

あまりにトートツすぎるコトバを
平気で口にしてしまうボクたちは
いつでも失敗して大恥さらし


云っちゃいけないってわかってるから
余計に云いたくなってしまうんだ
壊したらダメよと云われると
かえって壊れることばかり
考えてしまうのと同じように


ボクらはとっても嘘つきだから
決して信じたりなんかしないでね
君を傷つけるつもりはなかったなんて
そんなの全部 綺麗ごとだから


陰口 悪口 へらず口
いけないお口が悪さする
玉乗りよりも調子にのって
うまくごまかしてるつもりでいても
ある日突然 背後から
聞こえてくるあの恐ろしいささやき
『ワザ、ワザ』


そうしてピエロになりそこなったボクたちには
ひとり涙する場所さえも もうない




あまりにトートツすぎるコトバを
平気で口にしてしまうボクたちは
いつでも失敗して 大恥さらし



大恥さらし








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濡れネズミ

雨の街 ただ歩き続けて
意味もなく笑ったりした
ずぶぬれでもかまわないから
生きてみようと思った
弱いんですか 
弱いんですね
ダメになることすらできないなんて


灰色の空 ただ見つめて
理由もなく泣いてみたりもした
カッコ悪くたってかまわないから
強くなりたいと願った
バカみたいだね
バカみたいでしょ
捨てることも守ることもできない
できることと云えばただ
降りやまない冷たい雨に打たれながら
二度と戻ってはこないあの人のことばかり
ずっとずっと 待ち続けていることくらい


こんなにも街には 人であふれているのに
こんな雨の中 ボクだけがただ
ひとりぼっちです





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寝醒めの悪い日曜日、午前6時

窓を開けると 
外はさめざめと
雨降り
灰色の空と 灰色の空気が
僕の部屋の中に充満していく


僕は なんだかまた
死んでしまいたくなって消えてしまいたくなって
隠れられるものならどこへでも隠れてしまいたかった
だけどどこにも逃げる場所なんてなくて
だからなんだか 泣きべそかきそうになって
たまらなくなって目をそらす


視線の先

昨夜 食べ散らかしたままの
ブルーベリージャムが染みこんだトーストと
飲みかけたままのオレンジジュースが
素っ気なくつぶやく
        やれやれ またそうやって
        いつものように
        そんな気分に耽っているの と


部屋干しされたまんま 乾かない洗濯物と
投げつけるように書いたいくつもの
詩にもならない感情が
哀れむようにほくそ笑む
        やれやれ またそうやって
        いつものように
        自堕落に安心してしまうの と


耳鳴りのように
繰り返し繰り返し
何度も何回も云ってくるので
またもや僕は たまらなくなって
耳をふさぎながら
いっそ何でもいいから何かにぶつけてしまわないと
とても今日一日をやりすごせそうもなく


思いついた先


          ヨワムシ ケムシ ノ ホトトギス
          イツマデ タッテモ コエ モ ダセナイ

          ナカナカ ナケナイ カラス ガ ナイタ
          ナゼナゼ ナクノ ト キキカエス

          サミシイ ミシン ヲ カタカタ ナラシ
          ツギハギ ダラケ ノ ココロ ツクロウ

          コドク ドクドク コキュウ ガ ナッテ
          ドコニモ イケナイ タダ ヒトリボッチ


ゴロゴロ 語呂を弄くりまわす
何もしないでいるより少しは
気が紛れるような気がするから


こんな読みづらい片仮名だらけの文字に
意味なんてないけど


意味 ナド 無インダ 最初 カラ
無意味 モ 意味 モ 意味 ノ ウチ



・・・・・・なーんちゃって
 


無意味ついでに 呟いてみる 






          ド  ウ  カ  ボ  ク  ヲ  ユ  ル  シ  テ  ク  ダ  サ  イ







寝醒めの悪い日曜日、午前6時
外は 
さめざめと
雨降り


さめざめと
雨降り





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供述

きょう僕は 人をひとり殺しました
気の早いクリスマスソングが
街中に流れはじめたから
きらびやかなイルミネーションが
とてもとてもキレイで眩しすぎたから


きょう僕は 人をひとり殺しました
通りすがりの人でした
黒いロングコートを着ていました
ひどく疲れた顔をした人でした
苦虫をかみつぶしたような顔をしていました
深い深いため息を
いくつもいくつも吐き出していました
タバコ臭いにおいがしました
自分のついたため息がまるで胎児を包む羊膜のように
護られているようでいながら 
一方で閉じ込められてでもいるかのような
不思議な生き苦しさを纏った人でした


きょう僕は 人をひとり殺しました
彼が醸し出す そこはかとない不幸せな空気感が
僕の胸ぐらを掴んで放しませんでした
しわがれた顔で虚ろに淋し気に笑うその表情には
すべてを悟りきったかのような静かな諦めがにじんでいました 


ふいに西風が 僕の頬を弄るように去っていきました
瞬間 かすかにささやくような声が聞こえたような気がしました
雑踏にかき消されてしまいそうなほど小さく か細い声でしたが
たしかに僕は その声を捉えました
頭から電流を流されたような気持ちでした
諦めなんてそんな 生ぬるいものなんかじゃなかったのだ
彼は生きているなにもかもに絶望してしまっていたのだ
捨ててしまいたいのだ お終いにしてしまいたいのだ
僕は核心的にそう確信しました
僕は なんだかよくわからないものにひどく興奮し
そうしてわなわなと全身を震わせました
湧き上がる欲求を 抑えることができませんでした
だから殺しました 
間違いありません
僕が殺ったんです



相変わらず街にはクリスマスソングが流れ続けていました



         ジングルベル
            ジングルベル 鈴がなる

         ジングルベル
            ジングルベル
               誰のために鈴はなる

         ジングルベル ジングルベル
            僕のためのベルは多分
               もう一生鳴ることはないのでしょうね




きょう僕は 人をひとり殺しました
あまりにも哀しそうな顔をしていたから



あしたはきっと
誰かが僕を 殺してくれる





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闇夜にはぐれた迷い子ひとり

どこにも居場所がないような
そんなどうしようもない気持ちの午前1時
返ってくるはずもないあの人からのメールの返信を待ちわびて
何度も何度も送受信ボタンを押してしまう悲しい習性

          今日もうまく笑えませんでした
          今日もうまくしゃべれませんでした
          今日もうまく眠れませんでした

なんだか知らないけど
心の裏っかわがむず痒くってむず痒くって仕方がないのです
負った傷口がうずいてしようがないのです
掻き毟りたくって掻き毟りたくってたまらないのです
誰かの声にすがりたくなって 開いたアドレス帳
連絡先がどこにもない ただ空々しいだけのアドレス帳
ふいにこんな自分を 思いっきり
こっぴどく痛めつけてやりたい衝動に駆られる午前2時
飲み干したワインの空瓶を鏡に向かって投げつけて
飛び散った破片で怪我をする
突き刺さった破片は抜かずにそのままで
いまに私の体に入り込んで
紅い河を流れ流れて ズタズタに切り裂きながら
やがてこの鼓動を止めてしまうそのときまで


歳を重ねるごとに ダメになっていく自分を思い知るのです
愛されないのは誰のせい
愛せないのは誰のせい
嫌われてるの嫌いなの
いつものこと 毎度のこと
生まれ堕ちたときからの厄介者よ
筋金入りの疫病神よ
誰も近寄らないで 近寄らないで
信じて裏切られるのはこりごりだから
だけど冷たくしないで いなくならないで
何もしてくれなくていいから
他には何にもいらないから
ただ黙ってそばにいて
私を置いて逃げないで
ひとりにしないでお願いだから

          誰も信じちゃいないくせに
          誰かに信じてもらいたいなんて
          虫がいいにもほどがあるわね
          そりゃ 誰も寄り付かないのもうなずける話だわ

いい人ぶりたくて いい人だと思われたくて
ただ表面だけで笑顔を繕ってみせたりして
知れば知るほど ホントやんなっちゃうこんな自分 
ぶん殴って蹴り飛ばして
くしゃくしゃに丸めて ゴミ箱に棄ててしまえたら
見限って見捨ててしまえたらどんなに楽かしれやしない
でもね でもさ気づいちゃったんですよ
棄てられないことが辛いんじゃないってことを
棄ててしまいたいと そうすることでしか楽になれないと
勝手に決め付けて 勝手に捨て鉢になってる自分が辛いんだってことを
誰も信じられないのが辛いんじゃなくて
誰にも信じてもらいないと思い込んでいる自分が辛いんだってことを
もう理由わかんなくなっちゃって どうしていいのかさっぱりで
だからさ だから真夜中だっていうのに思いっきり窓をこじ開けて
言葉にさえならない嗚咽のような叫び声をあげては
胸の底から込み上げてくる涙を抑え切れなくなって
思わず思わず ワァワァ泣き出しちゃったりなんかしてしまうんです
夜の闇は静寂に包まれて 何を云うわけでもなく
12月の空気は冷え冷えと乾ききっているのに
何故だかとっても温かくって
やさしくそっと包んでくれたような
そんな気がした午前3時
「何時だと思ってるんだ」と近所の人に思いっきり怒鳴りつけられて
ペコペコごめんなさいして窓を閉める
くもった窓ガラスに映った泣きべそ顔の私が
ほんのちょっと 笑っているようにも見えた午前3時


考え方次第で人はどうにでも変われると
よく他人はいいますが
そんなことは十分わかっているのです
わかっていても早々変われないのが人間で
だったら 自殺してしまった人間は弱い人ですか
毎日のようにひどい暴力にさらされていながら
それでもなお 笑っていなきゃならない子はダメな子ですか


そのままでいい ありのままでいいよって
いいわけないから みんないなくなってしまうんでしょ
自分を肯定しなさいって 自分を愛しなさいって
愛し方なんて誰も教えてくれませんでしたよ
まずその愛し方ってやつを教えてくださいよって
そんなことを云おうものなら
どうせみんな そっぽを向いて知らんふり


なにもかもどうでもいいやって
こんな人生 とっとと終わらせてしまいたくなる夜が
幾度となく私に襲ってくるけれど
そんなときふっと頭によぎるのは
またエレカシやみゆきのライブ観に行きたいな、とか
読みかけたままの あの本の続きが気になるな、とか
買ってまだ袖を通していないあのワンピース着て
どこか遠い 行ったことのない街へ行ってみたいな、とか
こんなただ痛いだけの詩でも どこかの誰かが読んでくれて
どこかの誰かに届くことがあるのなら
こんなクソッタレな世界だって
そうまんざらでもないかもしれないなんて
思えるときが それは来るかどうかはわからないけど
そういうことが突然 なんの前触れもなく頭に思い浮かんだりなんかして
そんなことをあれこれ想像してみたら
なんだか急に 死ぬのがもったいなくなって
まだ捲っていないページに
そんな素敵な出来事が描かれているのだとしたら
もうちょっと もうちょっと生きてみようかなって
頑張ってみようかな なんて思えてきちゃう午前4時


辛い辛いと詩に詠っていたって
そいつが消えてなくなるわけじゃない
幸福だ幸福だと唱えていれば
幸福になれるというわけでもない


ただじっと待ってるだけでは
何もひとつも はじまることさえないんだってこと


タチムカウべきは自分
誰のものでもない
誰のためでもない
一度きりしかない人生だから
誰かの手に委ねたりしてはいけないのです


運命は私の この手の中
人生は私の この胸の中




ほら もう夜が明ける





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ぽたぽた焼き

たまねぎを切るときは
目にしみてしょうがないけど
冷蔵庫に入れて冷やしておくだけで
涙が出にくくなるように


ふきんを使っても 輪ゴムを巻いても
固くて開けられない瓶のふたが
ふたのまわりをちょっとあっためてやるだけで
簡単に開けられるように


昔から なんとかとハサミは使いようっていうでしょ
うまくやるには 何でもコツがいるものなのね


ダイエットしたくて痩せたい痩せたいと唄にうたっていても
結局痩せられなくて かえって太っちゃったりするのは
意志の強い弱いももちろんあるだろうけど
それ以前に 自分に合った痩せ方を知らないせいかもしれないし


いくら微分積分が理解できたからって
英語もフランス語もペラペラだからって
人の心の中まで理解できるとは限らないし


顔にしたってスタイルにしたって性格にしたって
いくら自分の好みのタイプだからといって
相手はまったく好みじゃないってことだってあるわけで


生まれた環境がほんの少し違っただけで
幸と不幸が分けられてしまう
それで人生が決まってしまうのならば
神様 生まれる前に殺してくれたらよかったのにと
三十何年も生きてきて
いまさらそんなことを云ったってキリがない


愛情過多で嘔吐し続ける人もいれば
間違った愛情を植えつけられてしまったがために
自分を痛めつけずにはいられない人もいる
傍から見ればどんなに幸福そうにみえても
みんなそれぞれ なにかしら抱えて生きてる
どんなに足しても掛けても つきまとう物足りなさ
割っても割っても割り切れずにもてあましてしまう感情
それを人は淋しさといい 哀しみと呼んでいる


生きることに正しいも間違いも本当はないんだけれど
人はひとりではとても脆くて弱い生き物だから
持ってる人をうらやみ 持っていない自分を憂いて
何が上で何が下とか 安心材料ばかり欲しがって
そんな自分がたまらなくかわいそうでかわいそうで仕方なくって
いっそこんな人生 終わりにしちゃいたいよぅって
それで楽になれるんだったらって
そんなふうによくよく考えちゃったりもするけど


でもさ でもね
たまねぎを切るときの裏技とか
固い瓶のふたを開けるためのコツとかみたいに
生きていくためのコツだって
きっとあるに違いないっていうふうにも思うから
人生を切り開く缶切りみたいなのがもしもあるのなら
やっぱりそれを探さない手は絶対ないなってさ




そんなこと考えてたら 
なんだか急に小腹がすいてきちゃったな
寒くなってきたし 今日は久々に
トマトシチューでも作ろっかな





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石が流れて木の葉が沈む

悪事千里を走る
4千キロメートルもの距離をどうやって走っていくのかしらね
まさか自分の足でってことはないわよね
駅伝みたいに人から人へと襷リレーしながら走っていくのかしら
あるいは車でってこともありえるわね
悪事だけに盗んだ車で とか
メンタル強そうだし ちょっとやそっとじゃ折れなそうだし
どっちにしろ 悪事の底力を侮ってはいけないわね


祭りのあとの淋しさは なんていう
吉田拓郎の歌があったけれども
祭りごとはいつか必ず 終わるときが来るわ
賑わいのあとの静けさは
どこか置いてきぼりをくらったみたいな気分になるものよね
去っていくものを いつも見送るばかりで
どこにも行けないで ただ立ち尽くしているだけの
ただ待っているだけの自分
祭りごとなんてきっと 風みたいなものなのよ
吹いては体を通り抜けて どこかへ行ってしまう
淋しさを置いていくのはきっと
風もまた淋しいから
忘れないでの代わりに残した置手紙
いつか心が凪いだころ
あの風はきっとまた吹いてくる


青菜に塩かけたみたいにぐったりとうなだれているあなた
追い打ちをかけるように傷口に塩を擦り付ける人たち
頑張れって云わないで
頑張らなきゃいけないことくらい わかってるから
苦しいのはお前ひとりじゃないって
そんなこと云われたって 楽になんかなれないの
いまはそっとしておいてあげてほしいのに
いまだけは責めないであげてほしいのに
いつかもう一度 自分で立ち上がるその時まで
ただ見守っててあげてほしいだけなのに


自分の頭の上の蝿も追えないなんてっていうけど
蝿を追いかけている人を一度でも見たことがあるかしら
蝿を追いかけることよりやらなきゃならないこと
みんな沢山抱えているのよ
でも 自分のまわりでブンブン蝿が飛び回ってたら
気が散ってなにも手につかないし
あれって結構イライラしてストレス溜まるのよね
殺虫剤まいて一気に仕留めてしまいたいところだわね
私だったら


牛を馬に乗り換えるように
いいとこまわりばかりしている
よく云えば世渡り上手
悪く云えばずるがしこい
そうして大概は人に嫌われることが少ない
私が見てきた限りで云えば
の話だけれど


私がしゃべり下手なのは
奥歯に物が挟まってなかなか取れないからです
というのは真っ赤な嘘です


鬼が笑うというけれど
鬼だって笑いたいときくらいあるでしょうに
いつも金棒もって厳つい顔ばかりしていたら
ストレスたまって鬱になっちゃうでしょ
それに鬼が念仏を唱えることがあったっていいじゃない
でも考えてみればかわいそうな生き物よね 鬼って
神妙な顔をしてみせれば 何か企んでるんじゃないかと疑われ
殊勝に振る舞えば 今度は何か裏があるんじゃないかと
あらぬ疑いをかけられる
そりゃ 念仏のひとつも唱えたくなるのも
ちょっとわかるような気がしてくるわ


あばたもえくぼ 恋は盲目
たとえ付き合いだした途端に仕事を辞めてしまっても
息が詰まるほど束縛するようになっても
顔が変形するほど 肋骨にヒビが入るほど暴力をふるわれても
それさえも愛情表現であると
そのすべてを愛することができれば
きっと彼も変わってくれるはずと 最初から信じて疑うことを知らない
人をキライになるより好きになる方がいいけど
はまりすぎて自力で抜け出せなくなってしまうこともあるから
これはなかなか 侮ってはいけない感情なのかもわかりません


あさりやはまぐりはいいわ
だっていつも2つピッタリくっついて離れない
両想いのふたりなんですもの
アタシなんてひとり岩場にしがみついて
打ち寄せる波を体に浴びながら
恋しいあのお方のことばかり考えているのよ
多分あの方は アタシがひそかに慕い続けていることさえ知らない
え? 気持ちを伝えたらどうかって?
嫌われたりしたらどうするのよ
いいのよ いいの
こうしてあの方を想いつづけているだけで
一生片恋だとしても 強がりとかじゃなく
ホントにアタシ それだけで幸福なの


会うは別れの始めというけれど
こんな日がきてしまうことは 最初からわかっていました
お互い意地の張り合いみたいなことはいい加減よしに致しましょう
どれだけ同じ時間を過ごしても
どれだけ言葉を尽くして語り合っても
結局解ったことと云えば
あなたは私を 私はあなたを
なにひとつ理解できなかったということだけでした
お別れいたしましょう
悲しいことなど何もありません
だってこれは必然的なことなのですから
あなたのメモリはすべて
今日を限りに削除いたします
これですべて終わりにできます


さようなら
さようなら


元気でねなんて云わないわ





テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

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雉も鳴かずば撃たれまい

秋に扇なんて いったい今何月だと思ってるの
爆弾低気圧の影響で 各地で大雪が降ってるって
ニュース見てないの?
暑い暑いなんて 聞えよがしに扇をあおいでるけれど
指先ふるえてるの バレバレよ
やせ我慢なんかしないで
ほら こっちに来て
こたつに入ってあったまりなさいな


雲泥の差ってさ
空に浮かぶあの雲と地面の泥を
誰が最初に比較なんてしたのかしらね
雲とタバコのけむりとか
土と泥とか
近いもので比較するんならまだしも
この両者は一体なにで勝負しようとしてるのかしら
どの道 勝敗は見えているのに
あざといわよね とっても
少しでも高みに立って 何かを見下したくてしょうがないのね
それで優越感に浸ったつもりになって
バカバカしいったらありゃしない


鵜の真似をする烏って嘲笑するけれど
泳いでみたい烏がいたっていいじゃないの
溺れることがわかってて
それでも水の中に入ってみたかった
わかってるよ どんなにあこがれたって鵜にはなれないことくらい
烏は所詮人に嫌われるゴミ荒らしの烏
だけど 憧れる気持ちくらい許してくれたっていいじゃない
たとえ身の程知らずと嘲り罵られようとも


鴨が葱背負ってやってくるわけないじゃないの
そんなことしたら鍋にして食べられちゃうのよ
食べられる気満々で 近づいてくるような奴がいると思う?
何でわざわざそんな危険を冒すような真似をするっていうのよ


腐っても鯛なんていうけど
それってただいつまでたってもプライドを捨てられない
見栄っ張りのコンコンチキなだけでしょ
だって腐ってるのよ もう食べられないのよ
いくら高級食材だからといってちやほやしすぎなんじゃないかしら


飼い犬に手を噛まれたからって
そんな烈火のごとく怒ることじゃないじゃないの
少し冷静になって考えてみるといいわ
あなたが先に なにかしてる可能性だってあるのだから


地獄に仏っていうけど
毎日が辛くてしんどくてたまんなくて
もうどうしていいのかわからないそんなときに
ふとやさしくされたら
誰だって仏のように見えてくるに違いないと思うのよ
でも 気をつけたほうがいい
弱っているときほど 何かにすがりたくなるのが人間
すがってしまったら最後
そのやさしい人はきっと あなたを地獄へと誘ってくれる
地獄に仏とはつまり そういうことです


坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
袈裟が憎けりゃ数珠まで憎い
数珠も憎けりゃ足袋まで憎い
憎しみという感情はどんどんと増幅していくものだということを
私は経験から学びました


善は急げ 急げ急げ
急いで走れ 突っ走れ


堪忍袋の緒が切れました
ブチっという鈍い音が たしかに聞こえました
ブチキレるとはつまり そういう意味だったのです


どんなに煮え湯を飲まされても
喉元すぎれば熱さも忘れてしまう
煮え湯を飲ますなんてよほどの悪意がなければできないことよ
そんなにアタシのことがキライだったのね


残り物に福があったためしはあって?
売れ残りのバーゲン品にいいものがあったためしがあるかしら
おいしいところは全部先に持ってちゃって
残り物に福とは凄まじい


引かれ者でも強がりくらい言ったっていいでしょ
小唄のひとつも歌えなくなってしまったらお終いよ
それに こんなの平気へっちゃらって思ってでもいなけりゃ
とてもやってられやしないじゃないの


溺れるものは藁をも掴む
そんな頼りないものでさえも頼りにしてしまう
まさか自分がそうなるなんて思ってもみないけど
でも 死の瀬戸際に立たされると
人間 何をするかわかったものじゃないわね
必死になっちゃうのね
おかしいわね あれほど死にたがりだったくせしてさ


枯れ木も山の賑わい
あれは木が枯れているわけじゃなくて
葉が枯れ落ちて 枝がむき出しになってるだけですから
失礼なことは言わないでいただきたい


井の中の蛙、大海を知らず
一歩外に出る勇気もないくせに
家の中じゃ威張り放題
一生その井戸の中にいたらいいわ
そこはとても安全で居心地がいいんだろうから


へそが茶を沸かすところを
一度でいいから見てみたい


そんなくだらない空想にふけっては
今夜もまた 午前様です





テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

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あつものに懲りて、なます和え物を吹く

石橋叩いてわたる 
こわごわ渡るくらいなら最初から違うルートを考えたらいいのに
それにもし叩きすぎて ホントに割れちゃったりでもしたらどうするのかしら


二階から目薬ってホントに無理なのかしらね
100回に1回くらいは成功するような気がするんだけど
人ってすぐに 諦めるのはまだ早いとか
時には諦めも肝心だとか
一体どっちなのよって云いたくなることばかり云うわよね
何もしないうちから無理と決めつけてしまうのって
すごく勿体ないことだと そうは思わない?


棚からぼたもちが落ちてきたってあなたははしゃいでいるけれども
それ あなたのために取っておいたものじゃないのよ
あなたのその食い意地にはまったく呆れてものが云えないわ
お腹壊したって 誰も同情なんてしてくれないわよ


豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえなんて
そんな死に方があるならもっと早く教えてほしかったわ
だって何の痛みも苦しみもなく逝ってしまえるのよ
こんな素敵な死に方ったらないじゃないの


急がば回れっていうけど
遠回りしたがために事故に遭うことだってあるでしょうに
どっちを選んだって 死ぬときは死ぬんだし
普段しないことをすると かえっておかしなことになったりするものでしょ
いつもの道を いつものとおり いつものスピードで
それがなにより それがなによりなのです


犬も歩けば棒にあたる
人間歩けば自転車にぶつかる


寝耳に水かけられてびっくりしている場合じゃないわよ
その人は間違いなく あなたに相当な恨みをもっている人間です
次はどんな陰湿なことをしてくるかわかったものじゃありません
いつ何時なにが起きてもいいよう 十分警戒なさることをおすすめします


穴があったら入りたいほど 恥ずかしくて情けなくて仕方ないのに
この世界のどこにも 入れる穴などありませんでした
学校に行けば クラスメイトにうまくなじめない
会社に行けば 時間と納期に追い立てられ
泣き泣きキーボードを叩く毎日
ラッシュアワーのつり革に べったりとへばりついたため息と
中吊り広告の下世話なゴシップ記事
すれ違う人すれ違う人 寄ってたかってみんなして嘲笑い
暗がりの中でひざをかかえて 秒針の音にいちいちビクビク怯えて震えて
本来安全であるべき家でさえ うまく呼吸することもままなりません
どこに隠れても いじわるでやさしい人たちに見つかってしまうのです
いっそ消えてしまえたらと願ってしまうけれど
朝がくれば否応なく まだ呼吸していることを思い知らされるだけなのです
こんな世界じゃ もう到底生きていけそうもありません
どうかこのダメな私を 隠してしまってください
誰の視線も嘲笑も悪口も 何も届かないところへ連れて行ってください
もしも叶わないのなら せめて生きていく強さをください
立ち向かっていけるだけの勇気をください
死にたくなるくらいの大赤っ恥をさらしてもなお
笑ってしまえるだけの図太さをください
笑い飛ばして蹴散らして
くしゃくしゃに丸めて放り込める大きなゴミ箱を
どうかどうか 私にください




はきだめに鶴の 鶴のほうに生まれてきたかったと
いまさらながら思う 今日このごろです





テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

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