縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

目次

☆**はじめに**☆

   ・ごあいさつ


☆**古い詩**☆

   ・忘れないようにしよう   
   ・自称詩人
   ・ぼくたちの失敗
   ・濡れネズミ
   ・抱きしめたい
   ・待ち人
   ・風よ
   ・超キライだった


☆**詩**☆

   ・友達
   ・もう笑うしかない
   ・たゆたう
   ・こんがらがった世界
   ・その胸に
   ・君のそばで逢おう
   ・いまの自分を
   ・
   ・海になればいい(飽和編)
   ・夜明け前
   ・ひとりぼっちの風
   ・海になればいい
   ・君の心のほんの1㎜ズレた場所
   ・彼方へ
   ・黄昏てく街の中で
   ・影法師
   ・宿命
   ・図形
   ・心がザワザワした日には
   ・不透明な無色
   ・ 
   ・関係者
   ・届かない
   ・寝醒めの悪い日曜日、午前6時
   ・ぽたぽた焼き
   ・僕を見つけてくれませんか


☆**用法・用量をお守りください**☆

   ・クスリをください
   ・使用上の注意


☆**原風景**☆

   ・夜の道
   ・待ちぼうけ


☆**詩でしか云えない**☆

   ・誰も知らない
   ・ライフ イズ ビューティフル
   ・サヨナラも云わずに
   ・あるコミュニケーション障害者の告白
   ・蒔いた種
   ・取捨選択
   ・たぶんそれを愛とは呼ばないだろうけど
   ・バースデーソング
   ・9Nine
   ・親愛なる
   ・LESSON 1
   ・愛を乞うひと
   ・かさぶた
   ・白紙の散乱
   ・オロオロしながら泣きながら描く祈りの詩
   ・招かれざる客
   ・自問無答の詩
   ・愛を売ってくれませんか ・ 幸福はいくらで買えますか
   ・烙印
   ・不眠症とそれに伴う末期的症状について
   ・私の声が聞こえますか
   ・ここを過ぎて悲しみの街
   ・By myself
   ・宇宙の掌の中、ひとは
   ・それは意外と単純な答えでした
   ・駆け巡る冷たい血液  
   ・通り過ぎるいくつかの事情 
   ・つじつま合わせでもかまわないから
   ・リサイクルできますか、このどうしようもない感情を
   ・ツギハギだらけの心縫うように
   ・シミ抜きお願いできますか
   ・曇り空のずっとずっと上の方は、いつだって晴れ晴れとしている
   ・処方箋
   ・突き刺さった破片はそう簡単に抜けそうにないけれど
   ・依存症
   ・生活
   ・彼女たちの事情~愛しすぎる女たちのうたう詩~
   ・供述
   ・闇夜にはぐれた迷い子ひとり
   ・指先で語られる人生悲話
   ・あたためますか


☆**救われたくて、救えなくて**☆

   ・ある生徒の日記
   ・ただ、そこにある奇跡
   ・救われない命とその後遺症について


☆**友への手紙**☆

   ・風にふかれながら
   ・しるし
   ・ただ、一切は過ぎてゆきます
   ・相変わらずの僕ですが


☆**雨音と古いレコードと**☆

   ・古いレコードを聴いていた(遠い空編)
   ・レイン レイン レイン
   ・傘がないわけじゃないんだけどさ
   ・古いレコードを聴いていた


☆**酔いどれ詩**☆

   ・人間喜劇


☆**連詩**☆

   ・ひとりぼっちの幸福くん
   ・音符の壊れたメロディ
   ・縫いとじられない赤い糸


☆**新釈ことわざ辞典**☆

   ・空の樽は音が高い
   ・石が流れて木の葉が沈む
   ・雉も鳴かずば撃たれまい
   ・あつものに懲りてなます和え物を吹く




☆**音楽**☆

   ・命にふさわしい / amazarashi
   ・つじつま合わせに生まれた僕ら(2017) / amazarashi
   ・A BOY / 森田童子
   ・エンディングテーマ / amazarashi
   ・狭心症 / RADWINPS
   ・カウント10 / 竹原ピストル
   ・名前 / amazarashi
   ・あいとわ / RADWINPS
   ・オーダーメイド / RADWINPS
   ・性善説 / amazarashi
   ・穴を掘っている / amazarashi
   ・きょうだい心中 / 山崎ハコ
   ・卑怯者 / タテタカコ
   ・風に吹かれて / エレファントカシマシ
   ・恋人よ / エレファントカシマシ
   ・風の笛 / 中島みゆき
   ・幸せになりたい / 服部祐民子
   ・アドバルーン / 服部祐民子
   ・僕が死のうと思ったのは / amazarashi
   ・少年少女 / amazarashi


☆**雑記**☆

   ・子宮体がん手術 入院日誌
   ・久々更新、今年もよろしくお願いします
   ・中原淳一



   





※色付き=最新記事です



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誰も知らない

今日 ひとりの男が電車に飛び込んで死んだ
理由は誰も知らない
朝のラッシュ時だった 駅は通勤客でごったがえしていた
アナウンスが流れる 
「○○駅にて人身事故のため 電車大幅に遅れています」
人々は口々に云う
「この忙しい時間に」「死ぬなら他でやればいい」と


男はとある出版会社に勤めていた
毎日が残業の日々だった
月300時間を超えることもザラだった
上司に窮状を訴えたところで
俺たちの時代は 残業なんてまだマシなほうで
徹夜なんてこともよくあったな などと
云われるだけならまだしも
仕事もできないくせに生意気云うな と
いらぬ説教をされるのが関の山だった
増え続ける書類の山 処理切れる仕切れないは問題ではない
仕事ができないと思われたくなくて ただ一心に仕事しただけだった
誰よりも遅くまで残って仕事した
毎日終電間際だった
深夜部屋に帰るともう何もしたくなくて
倒れるようにベッドにへたりこんだ
疲れているのに あの書類の山に埋もれて
窒息する夢を何度も見る
だからうまく眠れない
朝5時半 無情の目覚まし
今日も長い一日が始まる
このまま会社行きたくないな
でも行かなかったら 即クビにされるだけだし
睡眠不足と疲れからうまく頭が働かないまま着替えて部屋を出た
だけどどうにも足が重い
月300時間の残業はサービス残業で
もちろん残業代なんて出してはもらえない
一体なんのために働いているのだろう
仕事を替えればいいだろうと他人は簡単に口にする
一体 いつ新しい仕事を探しに行けっていうんだ
駅のホーム ごった返す人ゴミの中
もうこの中にはいられない
どうすれば今日 会社へ行かなくて済むだろう
そう思っているうちに 自然に足が前に向いていた
もうこれで楽になれる


通勤時間帯の事故 誰もが忙しなさそうに
電車遅延のアナウンスに舌打ちしている
たった今 人がひとり死んだことなんてどうでもよく
それよりも私たちは 朝の会議に間に合うかどうかの方を気にしてしまう
震災で失われた命には手を合わせても
この電車を止めた自殺者はただの迷惑な存在でしかないのか
命は尊いものだと 教わってきたはずじゃなかったのか


人ひとりの命にどれだけの価値があるんだろうか
身近な人じゃなくても
見ず知らずの誰かでも
その人を大事に思っている人がいて
その人を愛してやまない人がいて
その人がいてくれないと困る人がいて
だったら、身近だろうが他人だろうが
その価値は変わらないはずなのに
男は会社の駒としてこき使われ
社会の犠牲になって死んだ
これは全部想像だ 今日電車に飛び込んだ男についての
その男は もしかしたら自分だったかもしれないのに
いま舌打ちした人間は 私も含めて
弱者を踏んづけて 平気な顔していられる人間だ
そんなふうになりたくなかった
そんな自分ではいたくなかった


今日 ひとりの男が電車に飛び込んで死んだ
理由は誰も知らない






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