縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

古いレコードを聴いていた

古いレコードを聴いていた
窓の外 降り止まない雨の音
からっぽの部屋
からっぽのボク


君がいない
君がいない
ポツンとひとり がらんどうの部屋の中
泣き声みたいに響きわたるジャニスの声


君がとても愛した曲
理由がわからないといって
怒らせたこともあった


あの頃のボクたちは
一体何を見つめて暮らしていたのだろう
ただ二人でいたかっただけだった
不安で眠れない夜も 
心細くて泣きたくなる朝も
重なりあえばそれだけで 
なんとかなるような気がしていた
ボクには君が必要で
君にもボクが必要だった
愛してるなんて照れくさすぎて
とても口に出来やしなかったけれど
そんな言葉なんて云わなくたって
勝手に育まれていくものだと思ってた


求めていたものはきっと同じだったはずなのに
見ている世界はまるで別々だった
夜が明けるたびに綺麗になっていく君が
なんだかとても遠い人のように思えて
どうしようもなくなって
ひどい言葉を云えば 君が傷つくのを
ボクはよく知っていた
切り刻んでいたのはボクのほうなのに
イタイイタイと叫ぶのは いつだってボクのほうだった
淋しさを愛と履き違えて育んだつもりでいたはずの幸福は
いともあっさり萎びて枯れてしまった



          君をはじめて見たのはいつの日だったか
          枯葉が静かに舞っていたね
          街外れの街灯の下 震える躰ささえ
          遠くの空を探していた


          街路樹が風に揺れて孤独を誘う
          いつも君は そんなことを云っていた気がする


君はいまごろ どうしているだろうか
あの日探していた空は見つけられただろうか
ボクのことはきっと
もう 忘れてしまっただろうね


この虚しさも淋しさも悲しさも全部
ボクがしでかしてきたことの代償だってこと
わかってる
よくわかってる


君がいなくなったのも
そうちょうどこんな 6月の雨の夜だった


何の慰めにもならないけれど
こんな雨の夜にはひとりではとても堪えられそうもないから
思い出してしまうんだ 左側に君がいたあの頃の日々を
輝いてみえるのは 君の笑顔がなにより優しく見えたから
泣きそうになるのは 君に甘えてばかりだったボクの弱さ



古いレコードを聴いていた
君がとても愛したアメリカの古いブルース
わけがわからない というと
君がむくれるのが可愛くて
その姿が見たくてボクは
何度も 何度も君をからかっては笑ったんだ
ずっとそんなふうに 笑ってられると思っていたんだ
あの頃はまだ


いまさら嘆いてみたって もう遅いよな
だってもう君はいないのだから
失くしてしまったのは 壊してしまったのは
全部ぜんぶ ボクのせいなんだから



窓に映ったボクの顔
笑ってしまおうと思ったのに
うまく笑うこともできない
情けないな ほら
雨だれが涙のように
静かに頬につたって



落ちた





テーマ: - ジャンル:小説・文学

雨音と古いレコードと | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<救われない命とその後遺症について | ホーム | 僕を見つけてくれませんか>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。