縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

使用上の注意

          言葉は骨折しない
          言葉は咳をしない


          言葉は恋をしない 
          言葉は愛ではない


          言葉は嘘をつかない      
          言葉は裏切らない


          言葉は病気をしない
          言葉に効く薬なんてない


          言葉は絶望しない
          言葉は自殺しない
          そもそも言葉に命なんてない
     

          言葉に罪はない
          言葉が悪いわけじゃない



だけどでも


言葉の正しい用法・用量なんて
一体誰が知るというのだろう


わたしたちはいつだって用法を間違えては傷つけ合って
用量を間違えてはこじらせてばかりいる


わたしたち 心で生きる生き物でしょ
寝ても覚めても 心で生きるしがない生き物でしょ


なのに 心の正体は誰にも見えない
どうしてこんな気持ちになるの
なんであんなことしてしまったの
本当のところは 自分でもわからない
手に負えない


この思いを伝えるにはどうすれば
この気持ちを伝えるにはどうすれば



心に翻訳機でもついていたらよかったのに
心辞典でも売っていたらよかったのに


そしたらもっとちゃんと思いを伝えられたのに
云いたいことだけをちゃんと伝えられたはずなのに


傷つけたいわけじゃない 嫌われたいわけでもない


ずっとだなんてあるわけないのはわかってる
どんなことだって いつかは終わりがくることは
わかりすぎるほどよくわかってるはずなのに


見えない心が不安を煽るから
ささくれだった心がチクチク痛くてしょうがないから


苛立ちまぎれに投げつけては なにもかも壊してしまうんだ
操作不能になった心の前でわたしたちは いつだって無力で
粉々になった破片の前で泣き崩れたって もう取り返しがつかないんだ


いっぱいいっぱい傷ついて
いっぱいいっぱい泣いたのに
こんな思いするのはもうこりごりだから
2度と同じことは繰り返さないと
誓ったことさえいつの間に


いつまでたっても学習できない
出来損ないのわたしたち
いつまでたっても粉々になった破片ばかり 拾い集めてしまう




          言葉は傷つかない
          言葉は涙を流さない
          言葉は血を流すこともない



涙を流すのはわたしたち
血を流し痛い痛いと泣くのもわたしたち



ただひとつ 言葉が足りなかったばっかりに
ただひとつ 言葉が余計すぎたばっかりに


わたしたちは永遠に軌道から外れてしまう





それでも それでもさわたしたち 
心で生きる生き物だから
痩せても枯れても 心で生きるしがない生き物だから


こんな思いをするくらいなら
いっそひとりでいたほうがいい なんて思っても
それでもやっぱり 求めずにはいられない
ぬくもりも冷たさも全部ぜんぶひっくるめて
暗がりの中 叫び続けずにはいられない
声にならないその声で



他の誰でもない
あなたにめぐり逢えるそのときまで
あなたが返事をしてくれるそのときまで


いつだって
わたしたちは




テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

用法・用量をお守りください | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<指先で語られる人生悲話 | ホーム | あたためますか>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。