縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

雉も鳴かずば撃たれまい

秋に扇なんて いったい今何月だと思ってるの
爆弾低気圧の影響で 各地で大雪が降ってるって
ニュース見てないの?
暑い暑いなんて 聞えよがしに扇をあおいでるけれど
指先ふるえてるの バレバレよ
やせ我慢なんかしないで
ほら こっちに来て
こたつに入ってあったまりなさいな


雲泥の差ってさ
空に浮かぶあの雲と地面の泥を
誰が最初に比較なんてしたのかしらね
雲とタバコのけむりとか
土と泥とか
近いもので比較するんならまだしも
この両者は一体なにで勝負しようとしてるのかしら
どの道 勝敗は見えているのに
あざといわよね とっても
少しでも高みに立って 何かを見下したくてしょうがないのね
それで優越感に浸ったつもりになって
バカバカしいったらありゃしない


鵜の真似をする烏って嘲笑するけれど
泳いでみたい烏がいたっていいじゃないの
溺れることがわかってて
それでも水の中に入ってみたかった
わかってるよ どんなにあこがれたって鵜にはなれないことくらい
烏は所詮人に嫌われるゴミ荒らしの烏
だけど 憧れる気持ちくらい許してくれたっていいじゃない
たとえ身の程知らずと嘲り罵られようとも


鴨が葱背負ってやってくるわけないじゃないの
そんなことしたら鍋にして食べられちゃうのよ
食べられる気満々で 近づいてくるような奴がいると思う?
何でわざわざそんな危険を冒すような真似をするっていうのよ


腐っても鯛なんていうけど
それってただいつまでたってもプライドを捨てられない
見栄っ張りのコンコンチキなだけでしょ
だって腐ってるのよ もう食べられないのよ
いくら高級食材だからといってちやほやしすぎなんじゃないかしら


飼い犬に手を噛まれたからって
そんな烈火のごとく怒ることじゃないじゃないの
少し冷静になって考えてみるといいわ
あなたが先に なにかしてる可能性だってあるのだから


地獄に仏っていうけど
毎日が辛くてしんどくてたまんなくて
もうどうしていいのかわからないそんなときに
ふとやさしくされたら
誰だって仏のように見えてくるに違いないと思うのよ
でも 気をつけたほうがいい
弱っているときほど 何かにすがりたくなるのが人間
すがってしまったら最後
そのやさしい人はきっと あなたを地獄へと誘ってくれる
地獄に仏とはつまり そういうことです


坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
袈裟が憎けりゃ数珠まで憎い
数珠も憎けりゃ足袋まで憎い
憎しみという感情はどんどんと増幅していくものだということを
私は経験から学びました


善は急げ 急げ急げ
急いで走れ 突っ走れ


堪忍袋の緒が切れました
ブチっという鈍い音が たしかに聞こえました
ブチキレるとはつまり そういう意味だったのです


どんなに煮え湯を飲まされても
喉元すぎれば熱さも忘れてしまう
煮え湯を飲ますなんてよほどの悪意がなければできないことよ
そんなにアタシのことがキライだったのね


残り物に福があったためしはあって?
売れ残りのバーゲン品にいいものがあったためしがあるかしら
おいしいところは全部先に持ってちゃって
残り物に福とは凄まじい


引かれ者でも強がりくらい言ったっていいでしょ
小唄のひとつも歌えなくなってしまったらお終いよ
それに こんなの平気へっちゃらって思ってでもいなけりゃ
とてもやってられやしないじゃないの


溺れるものは藁をも掴む
そんな頼りないものでさえも頼りにしてしまう
まさか自分がそうなるなんて思ってもみないけど
でも 死の瀬戸際に立たされると
人間 何をするかわかったものじゃないわね
必死になっちゃうのね
おかしいわね あれほど死にたがりだったくせしてさ


枯れ木も山の賑わい
あれは木が枯れているわけじゃなくて
葉が枯れ落ちて 枝がむき出しになってるだけですから
失礼なことは言わないでいただきたい


井の中の蛙、大海を知らず
一歩外に出る勇気もないくせに
家の中じゃ威張り放題
一生その井戸の中にいたらいいわ
そこはとても安全で居心地がいいんだろうから


へそが茶を沸かすところを
一度でいいから見てみたい


そんなくだらない空想にふけっては
今夜もまた 午前様です





テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

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