縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

関係者

彼女がひとりぼっちで 部屋の片隅で膝を抱えて震えていたとき
ノーテンキなボクはいつものように テレビの前でゲラゲラ笑ってた


彼女が例の彼氏と別れたって 人づてに知ったときも
ボクは取り立てて気にするでもなく 日々バイトに明け暮れてた


それから彼女があまり外を出歩かなくなったと 彼女の友達から聞かされたときも
久しぶりに部屋を訪ねてみたら 見る影もなくやせ細ってしまったと聞かされたときも
ボクにはカンケーないことだと聞かなかったフリをして
夜ごと飲んだくれては酔いつぶれて バカ騒ぎばっかしてた


風の吹くがごとく 彼女の噂は堪えることがなかった
外に出歩けないことになってるはずの彼女が
夜の繁華街で知らない男の腕に抱かれてただの
何着もの服を買いあさっては
店を出るなり おもむろにバッグからハサミを取り出して
半狂乱になってズタズタに切り裂きまくってただの
突然泣き出したかと思えば また突然に奇声をあげて叫んだり
親切なお節介焼きが いかにも心配してます風でボクのところへ持ってくる
ボクにはどうすることもできないよと 一言半句も云おうものなら
最低のクズ野郎呼ばわりさ
まったく敵いやしないじゃないか


彼女の心の中で何が起こっているのかなんて
ボクにも もちろん親切お節介にも理解できようはずがない
それでも何かが確実に彼女の中に浸食し 蝕み
壊れてしまった



2月某日
彼女は大量のクスリと強い酒を浴びるほどに飲み干して
あっけなく死んでしまった

その数時間前まで ボクは彼女と電話でしゃべってた
彼女の方から電話してくるなんてめずらしいなと思いながら
受話器越しの彼女の声は 落ち着いてるようにも
震えているようにも聞こえた
少しの沈黙のあと 彼女はなにか云いたそうだったけれど
弱虫で卑怯なボクだから
なんだかそれを聞くのが 聞いてしまうのが恐ろしくて
ひたすらバカなことばかりひとりでしゃべり続けたんだ


ただひたすら バカみたいにしゃべり続けていたんだ




カンケーないじゃんってフリをして





☆追 記☆
2/18 大幅に改稿しました。

テーマ: - ジャンル:小説・文学

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