縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

宇宙の掌の中、ひとは


カーテン締め切って 明かりもひとつにして
みゆきの歌を聴いていたのです
今日も一日働きました
気持ちをどこかに置き去りにして
最近泣いたのはいつだったかしら
思いっきり笑った日はあったかしら


日々 虚しさばかりが積もっていくばかりなのです
誰といても どこにいても
心は空っぽのままなのです
やさしい人になりたくて やさしい人だと思われたくて
頼まれもしないのに あれやこれやと世話ばかり焼きたがってしまう
いくらまわりにたくさんの友達がいたとしても
一見普通に見える家族に囲まれて育っていたとしても
ふとした拍子に漏らすため息や言葉の端はしに感じる
云い尽くせないほどの淋しさが透けて見えてしまうから
もどかしい気持ちが 解りすぎるくらい解ってしまうから
でもそれは建前
本当に解ってほしいのは あたしの方なのです
全部じゃなくてもいいんです
半分もいかなくても それでもいいから だから
このどうしようもない気持ちの片方を 少しだけ担って欲しかったのです
馬鹿ですか 馬鹿すねあたし
あなたがどうしたらいいかわからない問題を
あたしが解決できるわけでもないのに
それでも あたしに出来る限りを振り絞って
絞ったつもりだったのに
貴方は いつだって自分の辛さを投げつけるばっかりで
だから あたしの服はこんなにも汚れて
貴方の服は真っ白のまま
勘違いしているようだから云っておくけど
それは決して穢れを知らない真っ白なんじゃなくて
汚れた部分をなかったことのように 覆い隠してしまっているだけのこと
30過ぎたいい大人が 純真でまっさらでございますなんて
よくもまあ 恥ずかし気もなく云えたものだと
呆れ果てすぎて かえって感心してしまうくらいよ


みんな 面白いようにあたしから去ってしまいました
どうしてあたしじゃ何も許されないの
どうしてあたしじゃ受け入れてはもらえないの
いつだって味方でいたつもりだったのに
人から拒絶されるたびに
お前は用無しだと 烙印を押されているようで
それでも与えられた役割を降りることもできず
死ぬまで一生 演じ続けなければならないのでしょうか


生まれたことが罪ですか
生きてくことが罰ですか


こんな自分なんかいなくなってしまえばいい
ほら そこにあるロープで
首をぐるぐるに巻いて一気にひっぱるがいいさ
そうすれば何もかも終われる
面倒な一切を終えることができるじゃない


ロープで首をぐるぐる巻きにして
両手で思いっきりひっぱってみました
頚動脈を圧迫され喉を締め付けられ呼吸ができない
苦しい苦しいよお 呼吸ができないよお 
このまま逝っちゃうのかな これで逝っちゃうんだな
よく死ぬときって
いままでのことが走馬灯のように現れるっていうけど
思うことといえばさ
洗濯もの外に出しっぱなしだった 夜から雨って云ってたっけな、とか
明日は資源ゴミの日だから 瓶とかペットボトルとか捨てなきゃな、とか
アマゾンで予約したamazarashiのCD 来月届くんだった、とか
着古した部屋着のままで死んで 見られるの恥ずかしいな、とか
部屋の掃除をしてからにするんだった、とか
こんなふうになるんだったら 云いたいこと全部ぶちまけちゃえばよかったな、とか
こんなあたしとでも 一緒に笑ってくれたあの娘のこととか
こんなとき 誰でもいいから誰か電話でもくれないかな、なんて
そしたら急に着信音が鳴ったりしてさ 
受話器の向こう側でぶっきらぼうに だけどとてもやさしくあたしの名を呼ぶ声に
何故だかふいに 涙がとめどなく溢れてきちゃったりなんかして


人間なんてそんなに強く出来てるわけじゃないけど
でもだからといって 最弱ってわけでもない
ほら その証拠に
あんな酷い状況の中でも
今日の今日まで生きてこれたじゃない
乗り切ってきたじゃない
死のうと思えばいつだって死ねたはずなのに
それでも それでもって
このまま終わりになんかできないって絶対
ぶるぶる震えながら 嗚咽のような叫び声をあげながら
心にそう誓ったからで


大丈夫 大丈夫
道はひとつしかないわけじゃないのだし
こっちがダメならあっち あっちがダメならそっち
曲がったり立ち止まったり 時には後ろを振り返ったりもして
そうやって一歩でも前に進んでいければ
それ以上 望むものなんてなにもいらないのです


カーテン開けて 見上げる夜空
今宵 月も星も何も見えない 
吸い込まれてしまうくらい深い深い闇が
ただただ広がっているばかり
デッキからはみゆきの歌が
❝宇宙の掌の中 人は永久欠番❞
ずっと いらない人間だとばかり思いながら生きてきたけれど
この世であたしはただひとり
誰にも代えようがないから あたしなのですね
このあたしだから あたしでなきゃダメなのですね



だからもう 今夜はおやすみ





明日もまた早い




テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

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