縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

LESSON 1

まただ またあの夢にうなされて
ふざけんなって叫んで目が覚めてしまった午前0時
ザワザワ落ち着かなくて やたら喉が渇いて
2リットルのお茶はあっという間になくなってしまった


誰かが私の知らないところで 私の悪口を云っていたとして
それを止めることなど どうしてできましょう
嫌われてるのなんて 大分前から気が付いていました
でも 気が付かないふりをし続けてきました
これ以上 自分を傷つけたくはなかったし
自分をキライにもなりたくなかったから 
自分を取り繕ってみせることなんて 簡単なことでした
ただ心を曝け出さなければいい ただそれだけのことですから
やさしい人と云われました 心があるとも云われました
心があるとはどういうことなのでしょうか
他の人には心がないということなのでしょうか
世間は不思議に満ち満ちています
一度足を踏み込んだら最後
二度と出てこれない 巨大迷路のようです


またあの夢を見ました
私を脅かすあの恐ろしい声
夢にまで出てきて 一体何がしたいのですか
そんなに私をめちゃくちゃにしたいのですか
そうしなければ気が済まないのですか
帳尻を合わせないと気が済まないのですね
もう ほとほと疲れましたよ
いっそのこと 一思いに殺してくれたらいいのに
そしたらもう 夢にうなされることも
それに叫んで 夜中に起き上がることもなくなるのに


          コロシテ ナルモノカ コロシテ ナルモノカ
          オマエ ヲ カンタン ニ
          ラク ニ ナンカ サセナイ
          イッショウ クルシメテヤル
          ニゲタッテ ムダ サ
          ドコ マデ ダッテ オイカケテヤル


私が苦しめば苦しむほど あなたは生きてる実感が湧くのですね
あいつらにはできなかったから
私を身代りにしているのですよね
私が幸福になるのが許せないのですよね
病気になるのは甘ったれの証拠ですか
冗談じゃない 冗談じゃないです
私のことを露ほども知ろうともしないで
自分の勝手な解釈で決めつけないでいただきたい


この世界のどこにも居場所を見出せず 
あっちふらふら こっちふらふら
どこにもたどりつけないで
彷徨い歩いているばかり


もうすっかり 諦めていると思っていました
もらえないものをいつまでも期待していても仕方がないと
観念したとばかり思っていました
だけど 本当は違うのかもしれません
諦めなんてついちゃいなかったのです
観念なんて まったくもって出来てやしなかったのです


私はまだ求めていました 期待していました
いつか変わってくれる日がくるのではないかと
やさしく微笑んで 私を受け入れてくれる日がくるのではないかと


裏切られることが解っているのに
傷ついて泣くのは もうこりごりなのに



足元を見れば案外近くに幸福は転がってるって
昔 誰かがそんなことを云っていたから
信じて下ばかり向いていたら
すっかり猫背になってしまいましたよ


幸福ってのは そこらへんに転がってるとかそういうんじゃなく
幸福だなあと感じることのできる能力のことかもしれないと
ふと そんなことを思いました


だから 思い出してみようと思ったのです
38年生きてきた中で 
幸福だと感じられた瞬間 出来事を


だけど どうしても思い出せないのです
殴られた痛みとか 投げつけられたひどい言葉とか
そういったことはまるで再現フィルムのように
鮮やかに蘇ってくるというのに


もうすっかり忘れてしまったってことなのでしょうか
辛かった記憶を上書き保存して消してしまったのでしょうか
そもそもそんなもの 初めからなかったのでしょうか


忘れてしまったのなら仕方がない
消されたものをあぶりだすことなんて不可能です


悲しい話はもういい
何度も何度も掘り起こしてはかさぶたひっぺがえして
自分を痛めつけることでしか
生きてる実感がもてなかった今日までの日々


でも 私はこれでお終いではないのです
終わらせるわけにはいかないのです
これからもずっと
私は私を続けていかなければならないのです
きっとこれからもまた あの夢にうなされるでしょうし
そのたびに 心が砕けそうになって
終わりにしちゃおうかなって
そんな考えが頭を掠める日が 何度となく訪れるでしょうけど


それでも いや それだからこそ
できるだけたくさん
たくさんいいことを憶えておきたいのです
素晴らしい瞬間を忘れないでいたいのです


悲しみが充満しているこの心が
いつかやがて 浄化され
きれいな水を湛えるその日まで


LESSON 1
さあ はじめましょう
今日という日は
私たちが生きていくための
大切な道標です



ここからすべてが始まるのです
ここからすべてを 始め直すのです





テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

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