縫いとじられない赤い糸

小奇麗な言葉で曖昧にごまかすのにはほとほと疲れてしまったから。そろそろ本当の話を始めませんか。身もふたもない、本当の話を。

親愛なる


もう何日、眠れぬ夜が続いているのでしょう 
僕が今見ているこの景色が、現実なのか夢なのか 
まるですべてがぼやけて見えているのです 
昨夜は少し気分が高揚していたのか、夜中の1時に突然電話なんてしてしまって 
あなたに大変なご迷惑をかけてしまいました 
なにかとてもひどいことを口走ったりしていませんでしたか 
自分でも時々、自分が何を云っているのかわからない時があるんです 
突然、訳のわからないことをひとりでぶつぶつつぶやいていたりして 
ふと我にかえって、僕は一体何を云っているのかと
ひどく落ち込んでばかりで 
けど、そんなことはただの言い訳でしかないですね 
自分の言葉に責任を負えないなら、それは絶対に云ってはならないことのはずですもの 
もしも昨夜、とてもひどいことを口走っていたなら
遠慮なく叱ってくださいね 


何年経っても、他人に馴れることができません 
子供のころからの赤面症はいよいよひどくなるばかりだし
他人と面と向かっただけで不安と緊張が最高潮に達してしどろもどろ 
自分でも一体何を云っているのか
怖がっているのに、かえってぎゅっと握りつぶしてしまうみたいに
まったくもって訳のわからないことばかり口走ってしまっては
恥の上塗りばかり繰り返してしまうのです 
嫌われたくなんかないのに 
気が付けばいつだって嫌われてばかりいるのです 


嗚呼、どうして僕はこうなのでしょうか 
あなたの云うように、誰彼かまわず自分を曝け出してしまえたなら
どれほど楽になれるかしれません 
何もかもジョークにして笑い飛ばしたり
人目もはばからずに泣いたりしまえたらどんなにいいだろうと思います 

でもダメなんです、出来ないのです、どうしても
怖いのです、僕は、人の眼が怖くて仕方がないのです。 
どんなにやさしそうに見える人であっても
気さくに話せそうに見える人であっても 
その眼の中に、あきらかな拒絶の感情を読み取ってしまうのです 
壁を作っているのが解ってしまうのです
入ってくるなという心の声が聞こえてしまうのです

おかしいですか おかしいですよね 
きっとあなたは云うでしょう 
考え過ぎだと 他人はそこまで思ってやしないと
主治医にも云われました
それは典型的な病気の症状なんですと 
自分でも薄々は解っているのです 
あなたや主治医の云ってることの方が、おそらく正しいのだということを 
けど、頭では解っていても心が反応してしまうのです、見えてしまうのです 
向こうから近づいてきてくれないことには、自分からは入っていけないのです 
たとえそれが鍵のかかっていない扉だとしても 
僕はその扉を勝手に開けることができないのです 
その扉の前でずっと立っているわけにもいかないから 
僕はだからいつもひとりなのです 
何も気にしないそぶりで、まるでそれが当然というような顔をして 
本当はずっと、誰かが僕の扉を開けてくれるのを待ってるくせに 

臆病なんじゃないんです 
ただ、卑怯なだけなんです 
いつもいつだって、自分からは何もしないで 
向こうからアクションを起こしてくれることばかり期待して 
期待がはずれては勝手に傷ついて 
メソメソ泣いてばかりの 
ただの卑怯者でしかないのです 


呆れてしまいましたか? 
こんなものですよ 僕なんて 


それでも あなたがいてくれたから
僕は今日も生きていることができているのです 
こんな僕でも 壁を作ることもせず 扉を開け放っていてくれるから 
頑な僕の扉をスッと開けて入ってきてくれるから 
なんとか生を続けていくことができているのです 
こんな僕でも 生きていていいのかなと思わせてくれているのです 
僕は あなたといる時間をとても居心地よく感じているのです 
あなたは決して ズカズカと入り込むようなことはしないから 
いつも適度な距離を保っていてくれることが 
僕にはとても とてもうれしかった 
嘘偽りない これが僕の正直な気持ちです 


なんだかとりとめのない話をしてしまいましたね 
他人とまともに会話もできず、いつもひとりで 
今日死のうか明日死のうかと、そんなことばかり考え耽っていた僕ですが 
あなたが生きる今日を、僕も生きたいと思うようになりました 
へたくそな生き方しかできないけど、それでもあなたが笑ってくれるから 
へたくそなままでもいいのかもしれないと、思えるようになりました
 
変人と他人が云うなら 僕は間違いなく変人の部類に入る人間です 
けど、変人でない人間などいるのでしょうか 
多かれ少なかれ、みんなどこかしら変わったところがあるのではないかと
僕には思えてならないのですけど 


あなたが好きになってくれた僕を 僕も好きになれたらいいと
あなたが受け入れてくれた僕を 僕も受け入れられたらいいと
それが僕のいまの 心からの願いです



 

テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

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